3.陰陽の考え方

(図1) 易の根底にあるのは陰陽の概念です。春夏秋冬がなぜめぐるのかというと、夏(陽)と冬(陰)が入れ替わり変化すればこそ、循環していくという考え方です。
(図1)
易は宇宙の変化を象るために、すべてのものが陰と陽で成り立っていると考えました。そして、陰陽は互いに相反しながらも、交ざり合おうとして大きな循環をおこし、あらたな進化をするとしています。
八卦太極図(図2)は易の構成図です。陰は--、陽は―という記号(爻)であらわします。まずはじめに「太極」をおき、そこから陰陽が生じるとしました。太極とは、陰陽に分かれる前の混沌とした宇宙の始まりと考えてください。右も左も縦も横もない、有も無もないものです。そこから陰陽の両極は発生するとして、便宜的に消極を陰、積極を陽として、正反対の特徴に分けます。

+は陽、-は陰、天と地では天は陽、地は陰、強いは陽、弱いは陰になります。

〈陰〉- 地 夜 悪 邪 止 弱 柔 小 月 寒 女
〈陽〉+ 天 昼 善 正 動 強 剛 大 日 暑 男

陰と陽は一体のもの

陰陽の考え方のまず大事なポイントは、陰と陽は別々のものではないということです。これをおさえておくと、『易経』が理解しやくすなります。
はじめにおいた太極は大きくは宇宙ですが、一つの物、事象とも考えられます。
一つのものに、陰の面と陽の面があるという考え方です。
太極はあらゆるものに置き換えてみることができます。たとえば、自然界を大きく陰陽に分けると、天(陽)と地(陰)です。 手をみてください。手を太極として、手の甲を表(陽)とするならば、手のひらは裏(陰)です。このようにさまざまなものを陰陽を分けます。一人の人間も正(陽)と邪(陰)の二つの側面を持ち合わせています。長所(陽)だけで短所(陰)のない人などいません。おなじく、どんな人にも正と邪の両面があります。
天候も晴れれば陽、雨なら陰になります。ですから、陰のグループ、陽のグループというような、横のつながりは全く関係がありません。善(陽)と悪(陰)、夏(陽)と冬(陰)、だからといって、冬は悪にはならないのです。

転化と成長

陰陽は転化します。たとえば、母親と息子の場合、性別としてみた場合は、息子が陽で母親が陰になります。長幼の序としてみると母親が陽で息子が陰になります。では、大地のように慈しみ育む面からみると母親が陰で息子は陽になります。一つのものを強い(陽)か、弱い(陰)に判断するとしても、視点や状況が変われば転化します。
何が陰で何が陽かと固定するのは、卵が先か、にわとりが先かを論ずるようなもの。固定して決まっているわけではなく、陰陽は変幻自在なのです。あくまでも、一つの対象をある視点から見たときの便宜的な判断です。
そして陰と陽はつねに対立しあって、対になって作用します。そこからすべての変化が生じます。夜があるから昼がある、不在があるから存在があり、静があるから動があります。
一年は、冬から夏へと向かい、夏はまた冬へと向かい、転化して作用しあって春夏秋冬がめぐります。
また、陰陽は変化して循環するだけでなく、交ざり合うことで新たなものを生む進化をします。自然界は天から雨や陽射しが大地に降り注ぎ、人間や動植物を育みます。男女が交わって、新しい生命が誕生します。人は正と邪の内面の葛藤があってこそ、精神的成長をするものです。これが易経の根底にある陰陽の概念です。